2003年 中部内家拳研究会 上海・桂林・陽朔研修団報告(後編)

   

順調に日程を消化する研修団、
急遽予定を変更したその結果は..

 
 

by 小谷千恵子

 
Illust : H.Takeishi Photo : I.Hashi  

11月13日(金)つづき...
バスはルートを外れ、川べりの船着き場へ到着した。
8人乗りの四角いいかだは、真ん中にテーブルが設置され、その上には殻つきピーナツとみかん、それにお茶が用意されていた。どのいかだも比較的新しいものでこざっぱりしている。屋根もある。テーブルの周りの椅子に腰掛けるとなかなか快適である。3つに分乗して出航。岸を離れすぐに、真ん中のいかだだけピーナツがないことが判明、大騒ぎとなった。天下の中部内家拳の面々、美味しいものは皆平等に食べなければ血ぃ見るで。(え、それは関西だろうって?さよか。)船頭さんが大声で岸に叫んでしばらくすると、あの例の細いいかだに乗った若者が追いついてきて、ピーナツの大袋を放り込んだ。もちろん、拍手を持って迎えられたのは言うまでもない。このピーナツは小ぶりながらカラッと美味しく、食べだしたら止まらなくなる。あれだけの大袋だったら後で持って帰って皆でわいわいやれる。しかしクロスロードの武石さんは橋先生のその指令を実行しなかったために後々まで非難の嵐を受けることとなった。

このいかだの浮かんでいる場所は地図で確認すると、どうも漓江の支流「田家河」かと。とにかく水がとびきり澄んできれい。昨日からバスにガンガン揺られていた私は、この水上のひと時が本当にここちよかった。水が澄んでいる上に天気がいいので、この特徴的な山々がまるで鏡のように水面に映って、とても美しい。こんな景色、東山魁夷の絵以外で見たことない。いかだを進める水音も何とも言えず、この世の雑事が一時消え去って別世界に滑り込み、私は何もかも忘れてこの時を楽しんだ。・・・・・しかし「今日の一番」で私はこの世に戻ってくる。

いかだが奥に行き着いて少しの間上陸。記念写真を撮って再び乗船、引き返し始めた。ここで壮族の可愛らしい女の子が細いいかだに乗って登場、我々のいかだについてくる。スピーカー片手に例のお祭の時の歌を歌ってくれる。時々合いの手を船頭さんたちが歌う。我々もちょっと真似して歌ってみたりする。やがて、女の子がひものついた綺麗な飾り玉をぶるんぶるんとまわしてポーンと上手にこちらの方に投げてくれた。ひとつ、ふたつ・・・、3艘のいかだそれぞれに。
(「もういっこー!」とリクエストするいかだもあったが。)歌と求愛の玉で十分に盛り上がったところで、今度は誰か我々の中から日本の歌を歌って欲しいと要請された。
ここで「今日の一番」。久野さんがすかさず立ち上がり、最初こそすこし恥ずかしそうだったがすぐに歌い始めた。(えらい!)
・・・・・え?山小屋がなんたらかんたら・・・・・
私、知らない。なのに周りは皆、静かに口ずさんでいる。ふと見ると橋先生が絶句している、そして加世田先生も。仲間だ!他の皆様と唱和できない者が約3名。
山小屋がどうたらこうたら・・・・・何かわからんけど、雰囲気はいい。それに久野さんは私の父とよく似た年頃なので歌っている姿を見て思わずホロッとしてしまった。 それにしてもあの歌は・・・・・。
いかだから降りると久野さんはあの女の子と熱い握手をして、求愛の玉をもらっていた。よかったね。ところで、ここのトイレに行った人が数人いるが、それは筆舌につくし難い状況だったらしい。興味のある人は聞いてみたら?

バスは桂林を目指す。いかだ遊びに疲れたほとんどの人が即、眠りについていた。加世田先生は座った途端だった。私は干し柿がずらりと並んだ店が面白くて必死で見ていた。(こっちの干し柿は上からペタンとつぶした形になってます。)レンガの工場も再度確認。それと、ガンガン走る車のお互いのやりとりが面白く興味深く観察した。とにかくブーブーブーブー自己主張して走る。しかもみんな強気。

やがてバスは桂林の市内に入った。ここでショッピングの時間をもらう。値段はちょっと高め。値切り倒して山水画を数枚買った。その後食事を終えて上海に向かうべくバスは桂林空港を目指した。ここで明日の研修内容についての変更事項が発表された。午後の練功十八法、荘元明・建申両老師がお身内のご不幸で急きょ参加できなくなったとのこと、代わりに加世田先生が担当することに。(なんや、遊べへんのか・・・・とバチ当たりな小谷。)その間橋先生は荘老師宅にお悔やみに行かれる。やっぱりまじめにやらなくちゃ、これは。

ここまで読み進んで、もう気づいた人がいるかも知れない。つまり中部内家拳の研修団レポートなのに、ものすごくこだわっているはずの食事について、ほとんど書かれていないことを。これを書かなきゃ内家拳レポートにはならんだろうと・・・。実は前回3月の研修に参加した時、私は何故かほとんど食事ができなかった。美味しいのに口元に持っていくとむっとしてどうしても食べられない。食べたいのに・・・。これは体調のせいだったかもしれない。今回、この研修旅行において、あの日々は夢幻ではなかったのではと思うほど食事がうまい!そこで、事細かにメモをとって出てきたものについてコメントするつもりでいた。なんせ全部すごく美味しいんだから。ところがである・・・・・。辛いもんの感想が書けない!皆、昨日のマーボと今日のマーボの違いを嬉しそうに語っているのに、私にはただ辛いという感想しかない。これは悲しすぎる。これをレポートできるようになるまで、私には食を語る資格がないのである、内家拳においては。・・・・・と真剣に思ってしまう私。
でもここでひとつ、自信を持って美味しかったパンの報告をしたい。上海に向かう桂林発の国内便で出たゴマパン。どこのホテルのパンよりおいしかった。誰か食べた?
上海着。蘭生大酒店チェックイン。・・・・・上海は、やっぱり好きだなぁ。(関西の血が騒ぐんかなぁ。)おやすみ!

11月14日(金)
朝8:45、ホテル5Fバトミントン場に集合。今日は一日研修である。食べ過ぎた体を引き締めよう。午前は虞定海老師の八段錦。お忙しい老師には大学の授業をずらして、わざわざお出でいただいた。全体的にシンプルで連続的、右3回左3回、あるいは6回続けて動いたりする。午前中いっぱいを使ってたっぷり教えていただいた。頭スッキリ、リフレッシュ。気持ちも体も少しは引き締まったかも。その後の昼食は美林閣にて。虞老師は日本語も少しだけOKだったので楽しい会食となった。

ホテルに帰ってすぐ、加世田先生による午後の練功研修が始まった。準備運動から始まって練功のひとつずつを丁寧にみっちり、みっちり教えてもらう。きついのは分かっていたがやっぱりきつかった。始まって30分ほどたったころ、どうもまずい事がおこってきた。加世田先生に一生懸命してもらっているのに、どうしようもない睡魔が私を襲いだした。昨日までの観光の疲れと朝の虞老師をお迎えしての研修の緊張とが、加世田先生のやさしい顔を見たとたんに一気に緩んだものと思われる。その上、美林閣でおいしい昼食をたらふく食してきた直後でもある。あぁ、このままではいかん。がんばれ私。でもここまで眠かったのはおそらく初体験かも知れない。だって、目ぇ開いたままガクッとなるんだから。あぁ、もう寝る!というところで休憩となったのは命拾いと言えるだろう。ホントに加世田先生、ごめんなさい。練習は時間いっぱい、めいっぱい、思いっきり行われた。よかった、よかった。橋先生も帰ってこられたので夕食の上海蟹を食べに行く。
ここでの食事もなかなか美味しいものだった。特に上海蟹は、前回上手に食べられなかったのだが、ここは丁寧に割ってくれたりするのでけっこうしつこく最後まで食べられたと思う。ホントにおいしい。ここで、この旅行中にめでたくも誕生日を迎えられた加世田先生に上海で一番おいしいケーキ屋さんのバースデイケーキ(大きかったなぁ)が贈られた。中国ではケーキに年齢も書き込むらしいが今回それはなかった。店内にハピバースディの音楽が流れ、挨拶に訪れた通訳ガイドの新人君が歌を歌い、大いに盛り上がった楽しい上海の夜となった。ケーキまでいただきました、加世田先生ありがとう。このクリームたっぷりのケーキが「今日の一番」だな。・・・・・・・・ではなかったみたい。

予約していた「足裏マッサージ」にでかける。これが「今日の一番」初体験レポート。何が一番ってそりゃあんた・・・・・!
全身マッサージの人たちはすぐに順番が回ってきて奥に消えて行った。しばらくして我々7人も部屋に案内されたが、結局5人と2人に分かれた。
爪切り、角質取りを総称して「足の修理」と言う。これも経験だと思って橋先生に勧められるままお願いした。まず、木の桶の底に丸い石を敷き詰めビニールをかぶせ、上から熱いお湯をはったものが運び込まれた。その中に足をそっと浸けてやる。お湯の中に何か薬の袋が浸かっていてだんだんお湯の色が変わってくる。と、このあたりまでは快適だった。次に一番奥の橋先生のところにかわいい女性が来て、足の修理を始めた。興味津々でのぞいていると、あっ!き、気持ち良さそうではあるが、そ、それって深爪とちゃうん?しかもそんなのみみたいなもんで思いっきりやってどうすんの!息を呑む私。これを私が・・・!しまった!後悔する間もなく、高校生みたいな若者がやってきて私の足をおもむろに修理し始めた。言い忘れていたが、私はすごくこそばがりで怖がりで痛がりだった。それをすっかり忘れ去っていたのだ、今の今まで。
最初の角質取りは、小さなメスみたいなもので足の裏全体をこそげる。書きながらこそばい。実際こそばい。のけぞって笑ったのは言うまでもない。次に橋先生の時には使わなかった大きなのみで足の裏をコキコキと削りだした。これは軽い魚の目を削ってくれてるのだ。それはいい。でも、爪をそんな風に削るのはやめて!私は大きな音付で息を呑んだ。
すでに橋先生はこの状況を察知し、満面の笑顔で私を観察し始めていた。なんとか修理が終わってマッサージに入る。橋先生は気持ちよさそうなのに、どうしてこんなに痛いんだ?「つーててて」と唸ったら若者は心配そうに私の顔色を見たが、ここで橋先生がゼスチャーで「もっとめいっぱいやったってくれ。」と!否定する間も与えられずにさらなる痛みが!上半身で痛みを表現する私。こんなに痛いのは私だけなのか。右隣の西山さんはというと、「うふっ・・・痛い・・・。」といたって上品かつ冷静である。そんなんあかんやん。痛かったら怒らな!さらに向こうの二人に至っては、なんの反応もこちらには伝わってこない。別世界である。
こそばい、痛い、こそばい、痛い。上半身をあっちこっちへやりながら、「いててて・・」「あー!」「むぐぐぐ・・!」などと声に出し、その間橋先生は体を揺らして大笑いしている。思わず足に力が入ると若者にペシッと甲を叩かれた。しまいには我を忘れて、「あかんってぇー!」「痛いっちゅうねん!」などと口走ったものだから、橋先生の喜びようといったらもう最高潮で、とうとう先に終わって別室の加世田、武石両名に報告すべく消えて行かれたのだった。西山さんは、支払ったお金の3倍、楽しませてもらいましたと言っていた。
・・・鞭杆レポートで、私が笑い過ぎでほっぺたが痛いと書いていたのがその時初めて実感できたと橋先生は後に語られている。喜んで、いただけましたか?

最後は膝のあたりまで揉み解してくれて、靴下まで履かせてくれた。私は心の底から「謝謝。」と言った。別室の二人の始まったのが遅かったので全員ホテルに帰ったのは11:00をまわっていた。全身マッサージの人はとっくの昔に帰っていた。足はさっぱりしたけど、頭はぼんやりだ。それにしてもあの、拳で土踏まずをグリグリするのはかなりきつかった。今だから言うけど、金曜日にしてもらって、翌週火曜日までじんじん打撲状態が続いていたのだから、やっぱりこれは他の人でもあれくらいの反応はしたんじゃないかと・・・。違う?ちなみに、全身マッサージに行った人達は、それはそれは気持ちがよかったらしい。体を裏向けた瞬間に寝てしまって記憶がないと話している人もいた。ホテルへ直で帰った人も、何か楽しまれたのだろうか。あぁ、濃厚な一日であった。

11月15日(土)
ホテルを9:00にチェックアウト。あっという間の研修旅行であった。かなりな内容の。まだ後少しの楽しみが残っている。バスは上海市内、上海博物館へ。上海博物館はかなり見ごたえのある何回でも訪れたい場所である。しかし内家拳メンバーは他の仕事でどうしても別行動せざるをえず、とても残念だった。次回は是非訪れたい。行った人はどうでしたか?きっとよかったでしょう?初日と同じく「東方茶園」で再び合流。昼食。ここのピータンがとても美味しかった。ここでピータンの作り方。紅茶・草木灰・生石灰・塩などを水でこねたものをアヒルの卵の表面に塗りつけ、その上にもみ殻をまぶして、冷所に3〜4ヶ月放置して作る。初めて食べたが、濃厚で本当においしかった。
昼食後、金茂大厦展望台へ。この日は景色が全体に白っぽく、遠くまでよく見えなかったのが残念だった。

いよいよ上海浦東空港へ向かう。つまり、リニアモーターカーに乗る。実は上海のリニアモーターカーはまだ試運転中で一般には開放されておらず、しかも運行は土・日のみとなっている。そこにうまいこと命知らずの我々は乗っかった。大丈夫なのか中国のリニアモーターカー、命を預けても。(システム、技術提供はドイツらしいが。)ステイションは新しくきれいで近代的(当たり前か・・。)。その龍陽路駅から浦東空港までの33kmを8分弱で走る。瞬間最高時速は430km、秒速にして60〜70m、これはすごい!面白そうだ。ホームに入ってきたリニアは3両編成だった。1両目はデラックスシートで我々は座れなかったが、普通席でも十分ゆったりしていた。そして何の愛想もなくそれは走り出した。速い。揺れるけど速い。中国の景色がなごりを惜しむ間もなく過ぎていく。バンバン!何かと思えばなんとすれ違った反対行きのリニアだった。速すぎて感想を考える間もなかった。

とうとう空港に着いた。搭乗の手続き、チェックインをする。関空組は二人なのでこの人数の落差は寂しい。飛行機の離陸時間まで時間はたっぷり。しかしここで搭乗時間の遅れることがわかって、あの3月の悪夢が再びよみがえった。(名古屋組も一時騒然となったとか・・・)
結局、関空組も名古屋組も30分の遅れで無事出発することができた。あぁ、よかった。さぁ帰ろう、日常へ。

今回の研修団、その内容はこのように様々な経験、ハプニング、勉強の数々であった。誠に有意義な内容であったと思う。まだまだ書けていない事は山ほどあるが、かいつまんでこの内容となったこと、また個人的な内容(睡魔の段、足裏マッサージの段など)がかなりあったことも合わせてお詫び申し上げる。

最後にやはり、どうしても、中部内家拳ならではのグルメメニューよりすぐりを、ほんの一部ではあるが並べてみることにする。全部は書けないのでお許しを。
あげぱん、やきそばもどき、きゅうりつけもの、シャキシャキきぬさやと生姜豚、くわいと鶏肉、とうふ、すいか、川エビ、里芋あめがけ、なすとミンチのフリッター、草魚フライ、チャーハン、アヒルローストなつめソース、ビーフン、麻婆豆腐、さんざし、春巻きフリッター、おかゆ、各種スープ特にきのこのスープ、上海蟹、辛そうで辛くない鶏カラアゲ、加世田先生のケーキ、もやし、青梗菜、セロリ、ピータン、ビール、コーラ、スプライト・・・・・。いかがでした?

   
     
         
   
         
   
         
 
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